それから20分程歩いただろうか。
「この辺だったかな。」
「その辺なら、昨日探しましたよーっ!」
「えーっと、ここかな…、いやあっちだ。」
「もーっ!その辺にもないですってばーっ!」
「いったーい!」
「ごめんなさい。有りました。これですよ。」
王刑事が指差したその先には…
「この前来た時は、こんなものなかったのに…」
二体の狐象が斜陽をうけ、その表情には深い陰影を、その空間には長い静寂を作り出している。
その静寂を破ったのは、遅れてやって来た、あくぴー、くわはらの両刑事で有った。
そして、そんな三人を前にして…
それを聞いた三人は…
それもそうだろう。
しかし王刑事は続けた。
「ちょっと?」
「いたずら好きなんです。」
「そうです。神様と言っても、人間に近い感情を持っていたりするんですよ。喜びもするし、怒りもするし、泣いたりもするし、笑いもする。そして…、いたずらもする。草原を見た時、冴上さん、悲しんだり、怒ったりしてませんでしたか?」
「う〜ん…」
王刑事は納得したかの様に深く頷いた。
「ふーん。」 「でも恐らくは…、こいつ自身が寂しかったんでしょう。」 「寂しい?!神様なのに寂しがるの?」 「そうです。神様は、人が楽しそうにしているのを見るのが大好きなんです。でもその反面、みんなが自分の事を忘れてしまったり、誰も傍に来てくれなく成ったりすると寂しがるんです。場合に依っては、怒って祟り神に成って、悪災をもたらしてしまう事さえ有る。」 「えーっ!大変じゃないですかぁそれ!」 「そう。だからお祭りが有るんです。」 「お祭り?」 「自分達の楽しそうな姿を神様に見て貰って、神様にも喜んで貰おう。寂しがったり、怒ったりしない様にして貰おう。それがお祭りなんです。」 「へーそーなんだぁ。私お祭りって、縁日が出るから嬉しいな、ってぐらいにしか思ってなかったぁ!」 「それでいいんですよ。楽しんでる姿を見て貰えてるんですから。この辺でも、年に一回、秋祭りが有りますね。みんなここの傍の八幡様には行きますが、ここまでお参りに来る人は、そうはいないのでしょう。だから寂しがって、たまたま傍を通り掛かった冴上さんを、からかってみたく成ったんだと思いますよ。」
これを聞いている三人。
「だから我々だけでも…」
そう言って、ビニール袋の中から、先程買った油揚げを取り出した。
暫くは、それを只見ていた三人で有るが…
車の音が、随分と遠くに聞こえる。
黙想を終えた王刑事が振り向くと、冴上刑事が言った。
「そうですか。それはいい事です。」
「だからみんなも来ましょう!ね、あくぴーさん、みわ姉さん!」
「そうね。」
その光景を微笑みながら見ていた王刑事が、いよいよ三人に声を掛ける。
「はい!」
ふとその瞬間…
さっと振り向き、闇に目を凝らす、が…
「ばいばい。」
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終
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