知里幸惠
*注:底本では、序文以外は見開きの左ページにアイヌ語のローマ字表記、右ページに日本語訳という構成になっているので、1ページにローマ字表記アイヌ語と日本語訳を並記してあります。画面のサイズが800×600以下の場合は、かなり見づらいかもしれません。ブラウザの「表示」→「フォント」から、フォントの大きさを調節してご覧下さい。 北海道に住んでいる本州からの移住民の子孫は、私もそうですが、アイヌについてはよく知らないの事が多いのではないかと思います。少なくとも私は義務教育期間中に、アイヌのことを正式に習う機会はありませんでした。正直に言って、アイヌについての私の理解度は、現在の小・中学生以下だと思います。それでも、小学校や中学校の図書館で偶然見つけたアイヌ民話の日本語訳を、とても面白く読んだのも事実です。 知里幸惠(ちり ゆきえ)について
『アイヌ神謡集』について アイヌの伝承文学の中で、物語性をもったものは大きく分けて「神謡」(カムイユカラ、オイナ)「英雄叙事詩」(ユーカラ、サコロペ、ハウキ)「散文説話」(ウエペケレ、トゥイタク)の三つに分けることができるそうです。 このうち、「神謡」は、短く繰り返されるメロディに乗せて、個々の物語に固有のリフレインがひんぱんに挿入される点を特徴とします。語られるときの所要時間は数分から十数分程度で、動物や自然現象などの神が、神々の世界や人間世界で体験した自分の身の上を物語る、というかたちをとっています。 編訳者の知里幸惠の死後、大正12(1923)年に東京郷土研究社から出版された『アイヌ神謡集』の中には、13編の「神謡」が収められています。アイヌである知里幸惠自らが、口伝で伝えられてきたアイヌ語を、出来るだけ発音に近いようにローマ字で書き表し、それらを、平易で洗練された日本語に口語訳しています。 『アイヌ神謡集』は、アイヌ自身の手によって最初に出版された伝承文学集として、現在も大きな意義をもっていると言えるのではないでしょうか。 [目次に戻る] |