あけまして……という時期でもないですね。ともあれ今年もよろしくお願いします。
「Code of Ruin」の第2回リアクションは届いています。No.2200「Rohdea japonica」、朱天美夜子マスターです。
結果はおおむねリプライ通りでした。あまり反抗活動に影響があったようには見えませんが、とりあえずアルフォンス卿とは確執が一つ作れたようなので、成果としては十分すぎるほどです。
「君の言葉を聞くことはできない。私は愛人に政治への口出しをさせないことをポリシーとしているからだ」さあフラグが立ちました。アルフォンス卿からは「愛人志願者」という認識です。一応すぐに改めたとはいえ、第一印象がそれです。
「Code of Ruin」第三回リプライ
一つ心配なのは、今回はまだ会誌が届いていないということ。未着受付日前後がバタバタしていて、結局未着の連絡をする前にリプライを提出することになりました。
噂によると、記事にはエアらしき人物が登場しているらしいので、早く拝見したいのですがー。
「お比女……ちゃんのことが、心配で、こんな事をしているんでしょう?」揉み合っているうちに、勝之進がどこかで朝顔を切ろうとしているのか、地震が激しくなる。
天狗達はお比女の守りなのだから。その言葉を聞いて、今にも若だんなを引き裂きそうに見えた天狗は、一寸手を止めた。それを逃さず若だんなは話を続ける。その為に、今日この場所へ来たのだから。
もっとも、こんな苦しい格好で天狗と対面しようとは、思いもしなかったが。
「お比女ちゃんを……落ち着かせるために……一緒に、話そうと」
途端、がくんと体が揺さぶられた。若だんなを掴んで睨む大天狗の顔が、強ばっているように見える。大きな嘴があって分かりにくいが、多分。
その口が吼えた。
「姫神様は、神なのだ。妖の血が混じったくらいのお前なぞに、何が分かる!」
「いけない……天狗殿、話を止めて下さい。拙い。今は、とにかくそのっ、拙い」
「己から話し出したくせに、何を言うか。我に命令をするなっ!」
眼前に怒りの形相があった。懇願する若だんなの身を、大天狗が腕一本で頭よりも高く振り上げる。余りに軽々と。
(木に……叩き付ける気か!)
目を瞑った。
「ごっ」と鈍い音がした。そして、天狗はこの地震が実は比女の力も関係しているという。比女が力を暴走させて地震を起こし、人々を苦しめたら、比女は深く心を痛め、また引きこもってしまう。そうなるくらいなら、人間に朝顔を切らせて、大災害を人間のせいにしてしまえ、というのが天狗の狙いだった。
見開いた目の前一面に、真っ赤な色が広がっていた。そして、まだしっかりと天狗に胸倉を掴まれているのに、体が飛んでいる。
天狗の顔が、離れていく。落ちる……。背中から誰かに受け止められた。
「佐助」
既に争っていた相手の姿は無い。目を落とすと若だんなの胸元を、大きな天狗の手がまだ握りしめていた。
肘の下から切り取られたまま。
「ひえっ……」
見れば先程の天狗が、少し先の大木の前で、血まみれの腕を押さえて立っている。その脇に、短い道中刀を構えた仁吉がいた。
《アクション》
切り取られた天狗の腕を拾い、元通りにくっつけてやる。
若だんなは己の為の薬から器用に目を逸らし、急いで大きな蛤の貝殻を開く。途端に、顔をしかめた。
「仁吉、物凄い色だけど、これ毒じゃあなくて傷薬なんだよね?」
貝の中の練り物には、緑と赤に混じって、光るような土色の筋が入っていた。
「若だんなのための薬なんですから、妙なものは入っちゃおりませんよ。ま、ちょっと……かなり染みるかもしれませんが」
大百足や異獣の毛や人魂の火など、並では手に入らぬ立派な材料が、使ってあるのだと言う。若だんなは座り込んだ草の上で、大いに顔をしかめた後、大天狗に声をかけた。
「古(いにしえ)、茨木童子は切り取られた腕を、渡辺綱から取り戻したといいます。元通りに付けたのでしょう。大天狗殿ならば同じように、切り取られた手も、薬で付くやも知れません。きっと上手くいくと思うんですが」
そこで言葉を切った。それからわざわざ、お比女の顔を覗き込む。
「この薬は大層、大層染みるそうな。仁吉が染みると言ったら、本当に物凄い代物なんだよ。たとえ腕が付くといっても、そりゃ痛いから、大天狗殿は嫌がるかもしれない」
大人だとて、痛いお薬は嫌うものだと若だんなはいう。それを聞き、お比女は天狗の顔を心配そうに見上げた。
「蒼天坊、痛いから……お薬は嫌い?」
「い、いや比女様、そういうことではなく」
蒼天坊と呼ばれた大天狗が、一寸おろおろとした。今の今まで争っていた、若だんなの持つ薬なのだ。それも手を切り落とした張本人の、仁吉が調合したものであった。争いの最中に、当の相手に手当てしてもらうなど、論外のことであるに違いない。
大天狗と比女を囲んで、周りに寄っている天狗達も、奇妙な話の流れに、いささか呆然とした様子をしている。
するとまた辺りが、ゆらりと揺れた。一同に緊張が走る。お比女が蒼天坊の手を見つめて、泣きそうになっていた。若だんなが気味悪い色の薬を、蒼天坊の眼前に突きつける。
「蒼天坊殿、痛いのが怖いんじゃないなら、さっさと手当をしましょうよ」
相手が手当を嫌う訳を重々承知しながら、若だんなはわざと子供に言うような言い方をした。その方が、蒼天坊が受け入れやすい気がしたのだ。お比女を早く安心させなくてはならない。蒼天坊とて、手当をするのなら早い方がよい。
(それに相手はお比女ちゃんの守り、山神様の使いだ。仲直りをしたいところだしねえ)
手を借りたいこともある。天狗達の力を集めたいのだ。だから蒼天坊には、出来たら若だんなの薬で腕を治して欲しかった。
《リアクション》
「分かったわい。その薬、使ってもらおうか」切られた腕をくっつけたときに、蒼天坊はかなり痛そうにしていたが、ともあれ腕は治り、自在に手が動くようになった。
蒼天坊がしかめ面を浮かべ、そう言ってきた。もし万が一偽薬であったら、天狗一同ただではおかぬと付け加える。
「その心配は無用なんですけれど」
若だんなは蒼天坊を見る。
「ただ手を切られるより、傷口に塗った薬の方が痛かったら、どうします?」
「さっさと塗れ!」
蒼天坊の気が変わってはいけない。若だんなは箱根神社へ続く階段の下、大きな木の脇に晒しを広げた。そこで仁吉と、何とも気味の悪い色味の薬を、蒼天坊の切られた腕に塗りつけたのだった。
「これじゃあ私は、厄災の元だ! 神は神でも……ま、まるで疫病神じゃない」愕然とする比女に、若だんなは声をかけた。
「ねえお比女ちゃん、泣いていないで。泣くよりも、水門を守りに行ったらどうかな」しかし水門の数は多い。天狗とて全ての場所を知っている訳ではない。そう言う蒼天坊に、若だんなはだからこそ人手がいる、と力説した。
若だんな→比女:友達。悲しませたくない。
比女→若だんな:一応友達。もしかしたら狭苦しい箱根から連れ出してくれるかも。
若だんな→天狗:今は敵対しているが、比女の守りであるから争いたくないし、勝之進を捜すために力が必要。
天狗→若だんな:比女の心を惑わせる異物。排除したい。
比女→天狗:口うるさいが、大切な家族のような存在。
天狗→比女:天狗の主である山神様の娘で、守るべき存在。
という三角関係です。
若だんなと天狗に共通するのは、「比女が大切な存在である」ということです。
ですから、若だんなが天狗に妥協点を見出させるには、比女がうってつけなのです。
我々は比女ちゃんが大事、あなたたちも比女ちゃんが大事。ならば手を結ぼうじゃないか、と。
でもただ話し合うだけでは物語として盛り上がりに欠けるから、戦闘シーンも入れたいなあ、と。この辺りは水戸黄門の構造に近いものがありますね。最初から印籠を出せばいいのに、あえて殺陣を入れるところが。
ともあれ、利害の一致、と言ってしまうと語弊もありそうですが、共通の感情を利用することで、敵対する相手との交渉を上手くまとめやすくなるのかも知れません。
今回の馬車馬リプライは、この構造を転用しています。
エアは女王陛下のお付き。ザイナハツィオさんも女王陛下の名の下に宰相に任じられました。
ザイナハツィオさんはアルフォンス卿と近しく、そのアルフォンス卿は反女王派の疑いがある。
本来ならば、エアの協力の申し出をザイナハツィオさんは嫌がりそうなものですが、女王陛下の口添えがあれば、それを断る訳にはいかないだろう(それを断るなら、女王陛下に任じられた宰相という地位も危うくなる)、という案配です。
友好的な申し出だからといって、相手がそれを受けてくれるとは限りません。
エアのように実際のところはそれほど友好的でない協力関係であれば、なおさらです。
人は必ずしも感情だけで動くわけではなく、様々なしがらみを持ちます。それらをリアクションから読み取ることで、交渉の材料、妥協点に利用できるのではないでしょうか。
「Code of Ruin」の第3回リアクションも届いています。No.3230「Epimedium grandiflorum」、朱天美夜子マスターです。
今回も、行動自体はおおむねリプライ通りに採用していただいています。だからといって結果もリプライ通りになるわけではないのがメイルゲームの面白いところで。
物資の横流しや、武器などの不審物の混入がないか、確かめるために監視しに来たのだが……。そのような物は一切見当たらない。代わりに、食糧の入手ルートが全く見えてこないことが不気味だった。ザイナハツィオ卿の行動を探ってみましたが、調達経路の解明には至らず、女王陛下に笑い飛ばしていただく日はまだ先のことになりそうです。
早朝には倉庫に、新しい食糧がうずたかく積まれているのだ。
どうやら、夜中に運び込まれているらしいのだが……問題は何故、夜中にこっそりと物資を運び込まなくてはならないのか。
何事もなく終わって、ガートルードに「心配性ね」と笑い飛ばして貰いたかったのだが……。
「ザイナハツィオ卿の食糧の入手経路がわかったら、ライカに戻っている私に知らせてくれ。そうでなくとも、王都やその他、不審と思う事があったら知らせて欲しい」エアは(つまり僕は)ザイナハツィオ卿はアルフォンス卿とつるんでいるものとばかり思っていましたが、どうやらそうでもないようです。だからといってアルフォンス卿が女王陛下に対して反抗の意志がない(なくなった)とは限りませんので、警戒を解いてはいけないのですが。
「Code of Ruin」第四回リプライ
その情報を自PCが知っていておかしくない理由がある場合、問題なくその情報を使用する事ができます。ザイナハツィオ卿が後ろ暗い方法で物資を調達していることは(エアにとっても、プレイヤーである僕にとっても)ほぼ間違いありませんが、仮に非合法な(あるいは反女王陛下的な)手段で物資を集めていたとしても、彼を取り締まったり裁いたりする権限はエアにはありません。それは、あくまで女王陛下が行うことです。
- 自陣営において広く知られた情報である。
- 新聞(会誌の事)に載っていて、それを読んだ。
- その情報が判明した時、自PCもその場にいた。
まあ色々理屈をこね回してみましたが、この辺が今回の落としどころになりました。
「ザイナハツィオ卿の食糧の入手経路」が何であるかは、今回のリアクションの記述からは判断できないと思います。判断するための情報がマスターから提示されていないのなら、それはリプライに書く必要はありません。
従って、今回のエアのリプライには「ザイナハツィオ卿の食糧の入手経路」が何であるかについて触れていませんが、そのことでこのアクションが失敗することはないと思います。おそらく次ターンに(一部であれ全部であれ)明らかになると思われますが、それがどのような経路であっても「エアはその経路を利用したいと思っている」という意思表示で、アクションとしては事足りるのではないかと。
先ほど「不正行為や密輸でないとすれば、それら以外の可能性が思いつかない」と書きましたが、「それら以外の可能性」を読み取れる描写が「ない」のでなく、僕が「気づいていない」なら、それは僕の読解力が不足していたということで。
あるいは他のリアクションに書かれていたのかもしれませんが、入手してないので、まあそのときもそのときということで。
最後のアルフォンス卿に手紙を書くくだりはおまけです。今回、リアクションで「不審と思う事があったら知らせて欲しい」とか、密に連絡を取り合っても不自然でないように愛人のふりをするとか言われてて、さらに個別通信で「アルフォンス卿から鳩を送られた」とあったので、その辺を織り交ぜてみました。
そこでせっかくなので「ウソをつくのは苦手」というエアの設定を前面に押し出した次第。
やっぱりアルフォンス卿は反女王派であってほしいです。心ならずも育んでしまった自身の感情を押し殺し、忠義に生きてみたいのです。
←第二回リアクション&第三回リプライ →第四回リアクション&第五回リプライ
東京中日スポーツ 2007年4月22日版より。
後半1分。MF浅利の右クロスが頭の上を通過した。左を見ると、FWワンチョペが構えていた。4月21日のFC東京対横浜FC戦についての記事ですが、これをメイルゲーム的に考えてみますと、「MF浅利の右クロスが頭の上を通過した。左を見ると、FWワンチョペが構えていた」という「事前情報」から(実際には他にも数え切れないくらいの条件があったんですけれども)、今野選手は瞬時に「胸でトラップして、左足を思い切り振る」という「アクション」を思いついたのですが、ここには、「ワンチョペ選手からボールが自分の方に送られるだろう」という推測があるわけです。
「絶対に折り返してくれると信じて走った。ゴールのイメージはできていた」。
胸でトラップして、左足を思い切り振った。ゴールネットを激しく揺らした。
「理想通り。すべて完ぺきだった」という自画自賛の一発。興奮するサポーターの大歓声を一心に浴びた。
最近、貴志祐介「クリムゾンの迷宮」を読みました。内容はゲームブックをテーマにしたホラーアクション? でした。
メイルゲームにおいても、こうした「クエスチョンマーク」を見つけることができれば、そこにアクションのヒントが眠っているかも知れません。
大雑把なストーリーは、どこかの自然公園のような場所に突然放り出された9人の男女がサバイバルを繰り広げ、やがて凄惨な殺し合いになっていくというものです。
ゲームブックをテーマにしているだけあって、随所に「ルール」が提示されています。それを拾い上げて耳コピーしてもよかったのですが、すでに図書館に返してしまったので気になったことを覚え書き的に書き留めておきます。ここで触れることはおそらく本題ではないと思うのですが、一応ネタバレ注意のために消しておきます。反転して読んでください。
スタイルシートが無効な環境では消えていません。
最初の方で、この「ゲーム」のルールとして、「崖を登ってはいけない」という決まりが提示されます。
にも関わらず、主人公は何度かこのルールを破ります。破るときにこそ「ルールを破ることになるが、大丈夫だろうか」と逡巡しますが、実行してから、このルール違反についての「ペナルティ」がそれとわかる形で下されていないのです。
クライマックスでは、「舞台の外に出る」というルール違反に対してのペナルティは示されるのにも関わらず。
もしかしたら読み返せばわかるのかも知れませんが、とりあえず一読した限りでは見出せませんでした。
自分のキャラクターの描写だけでなく、「持って回った表現」「いちいち言う必要のないことを強調している」という部分があれば、そこにはマスターの意図があるのかも知れません。
「クリムゾンの迷宮」においても、水浴びをするときにパートナーの女性が「耳栓をした」ということを殊更に強調していて、これは何かの伏線だろうと思っていたら、やはりそうでした。
リアクションの要約を作るときも、ただ闇雲に作るだけでなく、それらの情報の「気になる度合い」を自分なりにランク付けする癖をつけておくと、アクションを考えるとっかかりになるかも知れません。
4月16日の覚え書きで、次のようなことを書きました。
「ザイナハツィオ卿の食糧の入手経路」が何であるかは、今回のリアクションの記述からは判断できないと思います。判断するための情報がマスターから提示されていないのなら、それはリプライに書く必要はありません。ところで、ウィーン出身の哲学者ウィトゲンシュタインは、著書『論理哲学論考』の中で、次のような命題を示しています。
「語り得ぬものについては人は沈黙せねばならない」この言葉は「『語り得ぬもの』は、直接それについて語ることはできないが、語り得るものを最大限に語りきることで、『語り得ぬものがそこにある』ということを『示す』ことができる」ということだと僕は解釈しています。
" Wovon man nicht sprechen kann, darueber muss man schweigen."
アクションとは行動であり、その行動が成功して(実行されて)初めて意味を持ちます。
であれば実行されない行動(アクション)は、まるで意味を持たないことになります。
推測についても同様で、わからない(判別できない)のであれば、それは(その時点では)「解なし」です。あっているとも間違っているとも言えません。
A〜Fの6人で競争を行った。その結果について聞いたところ、A〜Dは次のように答えた。この問題の場合、ここに提示された条件(A〜Dの発言)だけでは、全員の順位を回答することができません。「Dは何位か?」と訊かれても答えられない──「語り得ない」のです。語り得ないのであれば、答えることができないし、答える必要はないのです。
A「私は、Eより後にゴールした」
B「私は、Dより後にゴールした」
C「私は、Eより先にゴールした」
D「私は、Fより先にゴールした」
このとき、全員の順位を確定するためのFの発言は次のうちどれか?
(選択肢省略)
さて、「不足」という言葉が出てきました。
「足りない物を補う」という構造は、神話の時代から続く物語の基本形式です。足りない物を補おうとするところに、ドラマが生まれるわけです。ここで「補ったものが何であるか」というのは、物語の構造的には大した問題ではなく(もちろん感情移入のしやすさなどには多大な影響がありますが)、「補うために四苦八苦した過程」が面白さの本質です。
NHKのドキュメンタリー番組「プロジェクトX」はまさにこの構造を踏まえていて、技術者達が直面した困難が技術的にどのようなものであるかというのは大した問題ではなく(その分野に興味のある人にとっては関心事かも知れませんが)、「困難とされていた課題をいかに乗り越えていったか」という過程を楽しむ番組です。
メイルゲームも、その世界の設定(PCの所属する組織やら戦うべき敵やら)は本質ではなく、困難な問題を乗り越えていくことがドラマであり、本質であるわけです。少なくとも僕はそう思っています。
……思っているのですが、実際問題として、枝葉末節にこだわる、いわゆる「オタク的視点」は、かなり浸透してしまっています。
あるマンガで、キャラクターの行動が一貫していないことには何も反応がないのに、ある回と次の回でキャラの付けていたバッジの位置や模様が違うと、それについての意見が寄せられる、ということがあったそうです。
その真偽は定かではありませんが、そういった傾向がある、というひとつのたとえ話にはなっていると思います。
メイルゲームは、不完全情報ゲームです。
ですから、すべての情報が公開されているとは限りません。先ほどの問題のように、回答を出すための条件が不足している状態であることの方が多いのです。
そして先述したとおり、「不足しているものが何か」というのは本質的なものではなく、「不足しているものを補うために、PCたちはどのような試行錯誤をしていくか」というところに本質的な面白さがあるのだと思っています(だから逆説的に「情報が欲しいだけなら、最終ターンに新規キャラを登録すればよい」と思うのです)。
本質的ではない、ということは、普遍的ではない、ということです。「このゲームの敵の弱点は触覚だ」ということが判明したところで、それは「敵を倒す」という行為における本質ではありません。違うゲームでは、弱点はしっぽかも知れません。すなわち、「敵の弱点は触覚だ」という情報は、違うゲームではまるで意味を持ちません。
ですから、「敵の弱点を見破るためには、こういうことをすればよいだろう」とか、「敵を倒すためには、敵の弱点を見破ればいいだろう」とかいう指針は、「弱点は何か」ということよりは本質的といえます。その指針は、ゲームが変わっても流用できる可能性が高いからです。
ただし、「敵対者と対峙したときにどうするか」という状況で考えると、「相手の弱点を探す」、「敵と戦う」という選択が、仮にあるゲームで有効だからといって、他のゲームで有効とは限りませんから、その意味では本質的ではありません。「逃げる」「無視する」「和解する」という選択もあり得るからです。
「ゲームが変わっても流用できる」ということは、あるゲームにおける経験が、別のゲームで活用できるということです。
「まったく同じメイルゲーム」は二度とないかも知れませんが、それでも本質的なところはさほど変わらない「似た構造を持つメイルゲーム」はあります。というか、過去のメイルゲームと同じ構造をまったく持たないなら、それはもはや「メイルゲーム」ではありません。
「まったく同じ人間」は二人といませんが、人間の本質というのは誰でも変わらないわけです。ある人間と何一つ同じ構造(肉体的であれ、精神的であれ)を持たないならば、それはもはや「ヒト」ではないでしょう。
「人間の本質とは何か?」ということについて述べた本はたくさん出ていますから、それらの本から「何かの本質を見つめるには、こういうことをすればよいだろう」という手法を学ぶことはできます。それはとりもなおさず、「何かの本質を見つける」という行為の本質であるわけです。
メイルゲームのアクションに話を戻します。
ここで言っている「語り得ない推測/成し得ない行動」とは、「絶対的な不可能」ではなく、「その時点における条件下では真偽/成否が判断できない」という意味での「語り得ない」であり、「成し得ない」です。
ですから、その「語り得ない推測」が的中することもあるし、「成し得ない行動」が成功することもあります。でもそれは偶然や直感に任せたもので、その理屈は誰かにおいそれと説明できるものではありません。
一度にすべて考えるのではなくて、まずは「偶然」や「直感」といった、言葉で説明できない(しにくい)ものの影響をひとまず無視して、確実なもの(語り得るもの)について考えるわけです。
物理の学習でも、「空気抵抗を無視する」という条件下で、投げた物体が放物線を描くことや、振り子の周期が常に一定になることを示すことから始まります。なぜそういった理想条件を設定するかというと、これらの物理現象の本質は、「空気抵抗によって減衰すること」ではないからです。放物線や振り子の性質(本質)を見極める、すなわち放物線や振り子の性質を「語り得るもの」にすることで、それまで語り得なかった「空気抵抗による減衰」という事象を「語り得るもの」に変えることができるかも知れないのです。
※ちなみに、こうして次々と「語り得なかったもの」を「語り得るもの」に変えていって、最終的に残ってしまうものがウィトゲンシュタインの言う「語り得ぬもの」であると僕は解釈しています。
メイルゲームにおいても同じことで、真実は突然空から振ってくるものではなく、事実を積み上げていった先に全貌を見せるものだと思っています。
だから僕は「語り得ぬもの」である「ザイナハツィオ卿の食糧の入手経路」には直接触れず、「ザイナハツィオ卿は女王陛下に食料の入手経路を報告することになっている」という「語り得るもの」を元に行動をしようと考えたのです。
「ザイナハツィオ卿の食糧の入手経路が何であるか?」ではなく、「ザイナハツィオ卿の食糧の入手経路が何であるかを(女王陛下が)問いつめるにはどんな条件が必要か?」を示したかったのです。
「アクションの成功」が、その人にとってのメイルゲームの本質でなければ──たとえばメイルゲームを「共通の話題を作ることで、友人との会話の種にしたり、新たな友人と出会えたりする場であればいい」と考えているならば、成否は問題ではありません。「ストーリーはどうでもいいけど、キャラがかわいくてコスプレしたいからそのアニメを見ている」という楽しみ方があったっていいのと同様です(でもこういう人はあくまで副次的な存在であって、カレーライスに対する福神漬けくらいの割合であって欲しいものです。副次的ゆえに福神漬けです)。
「成功」の定義は長くなるのでここでは触れませんが、「アクションを成功させたい」というのがプレイヤー間の一応の共通理念だとすれば、「どうやったらアクションは成功しやすいか」は、まだまだ考えてみる価値がありそうです。
ちなみに「しやすい」であり、「する」ではありません。科学者は物事を可能性で考えるのです。
「Code of Ruin」の第4回リアクションも届いています。No.4230「Allium giganteum」、朱天美夜子マスターです。
今回はひたすら手紙を書いていました。
もう一度読み直し、燭台に灯された蝋燭へと近づけ、火を付けた。燃え上がった羊皮紙を暖炉へ投げ入れ、灰になるのを見届けて、かき混ぜる。女王陛下に忠誠を誓っているはずが、すっかりアルフォンス卿の配下のようです。まあこれはこれでよいのですが。
エアはベッドの側机に置いてあった筆記用具を手に取ると、羊皮紙にペンを走らせた。
前回の手紙までは、アルフォンスの良いところを思い浮かべて、愛人らしく書こうと努力していたのだが、今はその手間を一切省いて、要点だけ書き付けていく。
ウォルボミーズ村には、似たような指輪をしている人が多いのです。銀メッキだったり、鉄だったりするのですが、ヘッド部分は皆、同じ紋章です。曲線を組み合わせた赤い丸い紋章……神官達が身につけている聖印に似ているような気もするのですが、私は紋章に詳しくないのでその由来が良くわかりません。うろ覚えですが、図を描いておきます。この紋章については会誌でも情報が出ていました。亡きコーネリアス様がその紋章について探っていたそうです。
「Code of Ruin」第五回リプライ
積み荷がライカでなくブラッシュウッドを経由しているとすれば、山中を通るための手形をクリス様から受けていることになります。
女王陛下の名の下に(後述の手紙などで正式に陛下から依頼していただけるとやりやすいです)荷馬車を止めて、手形が本物かどうか確認します。
方法は「これは本物ですか?」と訊ね、反応を「間違い探し」で判別します。
仮に偽物が見つかったとしても、危険なのでエア一人ではそれ以上は詮索しません。
「偽物の手形で通行している」という事実さえ手に入れば、後は女王陛下なりアルフォンス卿なりにお任せするつもりです。
アルフォンス卿の他、女王陛下にもお手紙を書きます。このところ悪い知らせが続いてお手紙にはあまり良い印象がないかも知れませんが、エアは手紙を誰かに書くのも誰かから届くのも好きなので、その気持ちを陛下に少しでも味わって欲しいと思います。調査の中でいい知らせがあればそれを書きますし、何もなくても、花が咲いたとか、天気がいいとか、そういう何気ないことを精一杯いいイメージで書いて伝えたいです。
←第三回リアクション&第四回リプライ →第五回リアクション&第六回リプライ&リアクション
「Code of Ruin」の第5回、第6回リアクションも届いています。2ターンもあれば状況も動きまくりです。
もっとも第五回5230「Ixia」(朱天美夜子マスター)ではアルフォンス卿から手紙が返ってこなくて心配してたらクーデターが起こっててえぅー、という状況確認でした。でもこれがあるから6ターンのリプライがあるわけで。
「私の記憶ですと、プーリー伯爵はアルフォンス卿だと思ったのですが。また、どちらかへお出かけになっているアルフォンス卿の代理を、ギルベルト卿が預かっているのですか?」「あの野心家のアルフォンスが」と考えてくれているあたり、朱天マスターはエアの初心をちゃんと覚えててくれるようで嬉しいです。そもそもエアの目的は彼を監視することだったのですから。
「いや、違うよ。アルフォンス卿は引退されて、ギルベルト卿が新しく爵位を継いだんだ」
「え?!」
穏やかなエアにしては珍しく、男に詰め寄ってその襟首を掴んだ。
「アルフォンス卿が引退? 一体、何があったんですか!」
「ギ、ギルベルト卿を慕う奴らがクーデターを起こして、そのせいでアルフォンス卿は自ら爵位を弟君に譲ったって……」
「そんなの嘘です!」
あの野心家のアルフォンスが、そんなしおらしいことをするなんて有り得ない。
「く、苦しい……。俺は、そう聞いたんだ。嘘じゃねぇ。引退して、大聖堂に巡礼に出たって!」
エアは男から手を放した。咳き込む男に、すいませんと小さな声で詫びた後、通過を許した。
クーデターにより、あなたの領地の伯爵はアルフォンスからギルベルトに変わりました。で、これを受けての第六回リプライは以下の通りです。
アルフォンスは反女王勢力として名乗りを上げましたが、ギルベルトは立場を決めあぐねているようです。また、間に横たわるキースホンドでは聖騎士として名高いラーエル卿がいるため、領民は攻め込むことに抵抗を感じています。
「Code of Ruin」第六回リプライ
いくらクーデターが起きたとはいえ、アルフォンス卿が自分に何の連絡も無く行方をくらますとは思えません(と考えて、もともと女王陛下への叛意を監視するために彼を調べていたはずなのに、意外にも彼を信頼していることに気付いて驚きです)。何かのトラブルに巻き込まれるなど、危険な状況が予想されます。
これまでエアは女王陛下やアルフォンス卿の後ろ盾を頼りに、あまり危険な場所に身を置こうとはしてきませんでした。
今、二つのクーデターでそれらの後ろ盾を同時に失い、とても不安に感じています。しかしそのような弱気では、陛下どころか誰一人守ることができません。
エアは誰かを守るために存在する騎士。その存在意義を勝ち取るために、勇気を奮って駆けます。
もしアルフォンス卿や、その他助けを求めている人がいれば、馬に乗せて安全なところへ避難します。
※パーシヴァル・コモンドールさんのプレイヤーさんと連絡を取り、アルフォンス卿を聖堂から連れ出したパーシヴァルさんをエアが安全な場所まで保護できたらいいなあ、という話をしています。
鳩にはアルフォンスの部下が「仲良し」の魔法で、必ずあなたの元へと手紙を届けるように教えていますので、移動しても必ずあなたに手紙を届けます。特に「移動しても必ずあなたに手紙を届けます」の部分ですよ。交流者の方からいただいたリアクションでアルフォンス卿が大聖堂にいるということを、僕は知っていたのですがエアはそれを知らない(自PCがリアクション上では知りえない情報に関しては、きちんとした理由付けがない限り使用する事ができません)ので、この鳩さんはまさに渡りに船でした。
それで返ってきたのは6230「kniphofia uvaria」(朱天美夜子マスター)です。
さすがにアルフォンス卿救出とまではいきませんでしたが、なによりパーシヴァルさんと合流できたのでかなり満足です。ここからラストに持っていくか、選択肢が広がった気がします。
「マスターより」ではランドシーアの現状が簡単に触れられていました。クーデターは何とか鎮圧できたようですが、相変わらず問題は山積みなようです。
実務能力の乏しいエアには国の政治がどうとかいう難しいことはよくわかりません。新女王のクロティルド陛下にももちろん忠誠を誓いますが、エアらしいやり方でお支えしたいです。
──ああ、でもキースホンドのラーエル卿のように人望厚い聖騎士と呼ばれてみたいです……。
「手紙」に関しては朱天マスターの粋な計らいもあったりして、リプライを考えるのが楽しそうです。
今さらですが「Code of Ruin」の第七回リプライは提出済みでございます。
「Code of Ruin」第七回リプライ
※ディヴィッドさん(のプレイヤーさん)からは、アルフォンス卿を使った実験はさほど危険なものではない、と聞いていますが、心配するあまり冷静な判断が難しくなっている状況です。
──それはそうと、「危険に晒す危険」って……。推敲は必要ですのう……。
←第五回リアクション&第六回リプライ&リアクション →第七回リアクション